はやし浩司

どんなママ?
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はやし浩司

あなたはどんなママ

こんなママ、こうしてみたら……?

この原稿は、「ママ診断」のガイドブックを、ホームページ用に書きあらためたものです。もしあなたの子育て
について、もっとお知りになりたかったら、このホームページの中の、「総合診断」を受けてみてください。

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過保護度
 テーマ  過保護度
 Q1 あなたの子どもが近くの広場へ友だちと遊びに行くといって、出かけていきました。その
子どものうしろ姿を見送りながら……。    

〔20点〕何とも言えない不安にかられ、すぐ様 子を見に行きたい衝動にかられる。

 〔10点〕あれこれ指示を与えることはある。あとで様子を見に行こうと内心では考える。

 〔0点〕どこへ行くにも、いつも一人で行くので、気にすることもなく、見送ることができる。


 Q2 子どもの寝顔を見ながら、あなたは子どもの将来をどのように考えますか。   

 〔20点〕いつまでも自分がそばについていなければ、この子は生活できないだろうと思う。

 〔10点〕ある時期までは私を必要とするだろうが、親離れの時期は近いと思う。

 〔0点〕毎日どんどんたくましくなっていくようで、子どもには私はもう必要ないのではと思う。


 Q3 子どもに留守番をさせ、ひとりで家に残してきました。外出しているあなたは、どう考えま
すか。     

〔20点〕家や子どものことが心配で、落ち着かない。早く帰るようにする。

 〔10点〕心のどこかで気になるので、できるだけ早く帰ろうと思うが、そのとき次第。

 〔0点〕家や子どものことはあまり気にならない。ゆっくりと外出できる。


 Q4 近所や学校に乱暴な子どもがいま す。どうもその子どもにこのところ、何かにつけていじ
められているようです。そういうとき、あなたはどうしますか。   

〔20点〕いじめは許せないので、その子を遠ざけるか、その親か先生にすぐ相談をする。

 〔10点〕しばらく様子をみるが、心配は心配なので、それなりの対処をする。

 〔0点〕子どもが何か訴えてくるまで、気にしない。そういうことはよくある。

xx点以下あなたは信頼型ママxx点〜xx点 平均的なママ。xx点以上〜あなたは過保護ママ

(過保護ママ)
●過保護な子どもって、どんな子?
 過保護といっても、内容はさまざま。食事面で過保護にするケース、行動面で過保護にする
ケースなどがある。しかしふつう過保護というときは、精神面での過保護をいう。子どもにつら
い思いや苦しい思いをさせない。あるいはそういう状態になると、すぐ助けてしまうなど。こうい
う環境にどっぷりとつかると、子どもは俗にいう、『温室育ち』になる。
 過保護児の特徴は、@依存心が強く、自立した行動ができない。わがままな反面、目標や規
則が守れず、自分勝手になる。鉛筆を落としても、「鉛筆が落ちたア〜」と言うだけで、自分で
は拾おうとしない。A幼児性が持続し、人格の「核」形成が遅れる。年齢に比べて幼い感じが
し、教える側からみると、「この子はこういう子どもだ」というつかみどころがはっきりしない。B
何ごとにつけ優柔不断で、決断力がない。生活力も弱く、柔和でやさしい表情はしているもの
の、野性的なたくましさに欠ける。ブランコを横取りされても、ニコニコ笑いながら、それを明け
渡してしまうなど。そのためいじけやすく、くじけやすい。いやなことがあると、すぐ投げ出してし
まう。

●過保護の背景に。親の心配
 親が子どもを過保護にする背景には、何らかの「心配」がある。この心配が種となって、親は
子どもを過保護にする。このテストで高得点の人は、まずその種が何であるかを知る。もし「う
ちの子は何をしても心配だ」ということであれば、不信感そのものと戦う。(過保護にする)→
(心配な子になる)→(ますます過保護にする)の悪循環の中で、あなたの子どもはますます、
その心配な子どもになる。一つの方法として、今日からでも遅くないから、「あなたはいい子」
「あなたはどんどんいい子になる」を子どもの前で繰り返す。最初はどこかぎこちない言い方に
なるかもしれないが、あなたがそれを自然な形で言えるようになったとき、あなたの子どもは、
その「いい子」になる。そういう意味では、子どもの心はカガミのようなものと考えとよい。

●子育てから手を抜くことを恐れない
 つぎに子育ての目標は、子どもをよき家庭人として自立させること。そのためにも、子育てか
ら手を抜くことを恐れてはいけない。私が作った格言に、『何でも半分』(子どもにしてあげるこ
とは、何でも半分でやめる)、『あと一歩、その手前でやめる』(すべてをしてあげない)がある。
イギリスの哲学者であるバートランド・ラッセルも、こう言っている。「(親は子どもに)必要なこと
はするけども、その限度を知っている親のみが、家族の真の喜びを与えられる」と。
 要するに子どもというのは、キズまるけになりながら成長する。子どもがキズつくのを恐れて
はいけない。親としてはつらいところだが、そのつらさにじっと耐えるのも、親の務めということ
になる。とくに子どもどうしのトラブルは、一にがまん、二に静観、三、四がなくて五に先生に相
談と考える。


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1)過保護ママ

(得点の高かったあなたへ)
 過保護と一口に言っても、内容はさまざまです。食事面での過保護、運動面での過保護など
があります。しかし子育てで問題があるのは、精神面での過保護です。「近所のわからず屋と
遊ばせると心配だから」という理由で、親子だけのマンツーマンで子育てをするのが、その一
例です。精神面で過保護にすると、子どもは俗にいう「温室育ち」になり、社会性がなくなりま
す。あるいは集団の中に入れると、神経疲れを起こしやすく、神経症を発症することもありま
す。
 年中児になるころまでに過保護症状(従順で柔和、いつも満足げで生活力が弱いなど)が出
てくると、以後それがなおるということはまずありません。子どもを包む生活パターンがそうなっ
ているからです。
 過保護の根底には、親の心配があります。つまり何か心配の種があって、親は子どもを過保
護にするわけですが、この種が何であるかをまずさぐってみます。その種が何であるかがわか
るだけでも、問題は半分解決したとみます。
 (得点の低かったあなたへ)
 あなたは子ども信頼型のママということになります。ひょっとしたら、「子育てがこんなに楽で
いいものかしら」と思っているかもしれません。毎日の生活が淡々と流れ、私がここにいて、子
どもがそこにいるといった感じで、「子育ての時」が流れている……。今、あなたの子どもはすく
すくと成長しています。もしそうならこのままの状態を続けてください。あなたの子どもはたくまし
い子どもに成長するはずです。ただし、育児拒否、冷淡などは問題外ですので、もしそういう傾
向があれば、別の診断項目で判断してください。



(2)過干渉ママ

(得点の高かったあなたへ)
 口がうるさい程度なら、子どもにはほとんど影響はありません。それに合わせて、親側には
げしい情緒不安症状があると、子どもの性格は内閉し、場合によっては萎縮します。(ただし、
反対に性格が粗放化することもあります。このタイプの子どもは、親の威圧をたくましくはねか
えした子どもということになります。)
 親が過干渉になる背景には、親側に不安の種があるとみます。つまり親は何か不安の種を
原因として子どもを信ずることができず、子どもに過干渉を繰り返すわけです。もしそうならあ
なたは、その不安の種を取り除くことから始めます。なぜあなたの子どもが心配なのか。また
どうして心配になるのか。そのあたりの自己分析から始めます。こうした心の問題は、その原
因がわかるだけでも、半分は解決したとみます。まずいのは原因もわからないまま、やみくも
に現在の状況を変えようとすることです。
 と言っても、親側にある情緒不安症状(多くはうつ症、うつ病など)は、それ自体が深刻な問
題であり、簡単にどうこうなる問題ではないかもしれません。ただ言えることは、「親の情緒不
安、子育てに百害あって一利なし」です。その悪影響は必ず、子どもに現れてきます。このこと
を肝に銘じて、努力します。
 (得点の低かったあなたへ)
 あなたのおおらかでのんびりとした性格は、それだけでも大きな財産です。子どもから見れば
何か物足りない親ということになるかもしれませんが、それはそれとして、あなたの子どもの心
はまっすぐ伸びていきます。ただし言うべきことは言うこと。あなたの子どもはそれを内心では
待っているはずです。



(3)過関心ママ

(得点の高かったあなたへ)
 親の鋭い視線は、子どもの心を刺します。参観日などでも、親の鋭い視線が気になって、授
業をやりにくく感ずることがありますが、視線というのはそういうものです。子どもを伸びやかに
するためには、子どもから視線をはずす。これは鉄則です。
 このテストで高得点の人は、日ごろ鋭い視線が子どもに向いていないかを反省します。そうい
う鋭い視線が日常化すると、子どもは萎縮します。一見、おとなしくて従順で、ものわかりのよ
い子どもになりますが、その一方で、常識はずれな行為をしやすくなります。自分で考えるとい
う習慣がないからです。
 と言っても、子どもから視線をはずすことは簡単なことではありません。親自身の人生観その
ものを修正しなければならないからです。一人の人間として、したいこと、すべきことを外の世
界に向けていく。その結果として、親は子どもから視線をはずすことができます。
 (得点の低かったあなたへ)
 無責任な放任的態度は別として、そうでなければ、あなたの子どもは常識豊かな子どもにな
っていきます。常識というのは、善悪のバランス感覚のことをいいます。してよいことと、悪いこ
とをそのつど判断する力のことをいいます。つまるところ教育というのは、心豊かな常識を子ど
もの中に育てることです。過関心、過干渉は、その常識をつぶすことになりますから注意しま
す。



                                        
(4)溺愛ママ

(得点の高かったあなたへ)
 子どもがかわいいのは当たり前です。本能が思わさせるのです。だから親は、子どもを育て
ます。しかし本能は本能。食欲や性欲と同じ、本能。この本能に溺れることにより、親は子ども
を溺愛するようになります。
 本来、子どもを溺愛する親は、精神的に弱いか、情緒に何らかの問題のある人だとみます。
このタイプの人は、溺愛を外の世界に向かって、むしろそれを誇る傾向が見られます。溺愛
を、深い親の愛と誤解しているためです。
 子どもとの間に一線が引けないようであれば、まず自分自身の問題と闘います。溺愛児は一
見、ものわかりがよく、柔和で満足げな様子を見せますが、本来、子どもにとっては望ましい姿
でないことは言うまでもありません。
 (得点の低かったあなたへ)
 子どもに冷淡すぎるのもよくありませんが、ほどよく子どもを突き放すことは、子育ての要で
す。「子育ては子離れ」というのは、そういう意味です。親が子離れの準備をすればするほど、
子どもは自立の準備をしやすくなります。一つの目安として、子どもは小学三〜四年生を境に
親離れを始めます。しかし親がそれに気づき、親が子離れを始めるのは、子どもが中学生や
高校生になってからです。このギャップが、親子の間にいろいろな悲喜劇をもたらします。
 子どもが幼稚園へ入るころから、子育てからはどんどん手を抜いていきます。またそれを恐
れてはいけません。あなたの子どもは立派に自立していきます。



(5)自己犠牲ママ

(得点の高かったあなたへ)
 子育てには自己犠牲はつきものです。自己犠牲が悪いというのではありません。が、その程
度を超えると、子どもは自分の姿を見失い、世界は自分中心に回っていると錯覚するようにな
ります。いわゆるどら息子化が進みます。
 親は親で、一人の人間として、自分の人生を大切にします。もしあなたの子どもが、その子ど
も(あなたから見れば孫)のために、自分を犠牲にしている姿を見たら、あなたはどう思うでしょ
うか。きっとあなたは、「自分の人生を生きなさい」と言うに違いありません。
 (得点の低かったあなたへ)
 以前オランダ人の家庭に招かれたときのことです。読書をしている母親に、三歳ぐらいの女
の子が話しかけてきました。で、その母親は一通りその女の子の話に耳を傾けたあと、こう言
いました。「ママは今、本を読んでいます。じゃまをしないでね」と。
 欧米人は自分の時間は自分の時間。子育ての時間は子育ての時間と、はっきりと区別して
います。こうした生き方の善悪はさておき、日本人が学ぶべき点もたくさんあります。私は個人
的には、自分の人生は自分の人生として大切にしたいと思っています。子育ては人間にとって
大切な作業かもしれませんが、自分の人生も同じように大切にしたいです。多分、あなたも、私
と同じように考えている人かもしれません。



                                       
(6)甘いママ

(得点の高かったあなたへ)
 あなた自身の精神的な未熟さが疑われます。あるいは「やさしい」ということと、「甘い」という
ことを混同しているのかもしれません。「子どもを愛する」ということと、「子どもに楽をさせる」と
いうことを混同しているのかもしれません。どちらにせよ、もう少し毅然とした態度をとらないと、
そのうち子どもがあなたの言うことを聞かなくなります。あるいはナメられてしまうかもしれませ
ん。こうなると、あなたの家庭には秩序そのものがなくなる危険性があります。子どもが小さい
うちならまだしも、子どもが大きくなると、手がつけられなくなるということもありえます。「子ども
は子どもの人生を勝手に生きればよい」という、ニヒリズムも時によっては必要です。またそう
いう思いが、今のあなたの子育てを正常化します。
 (得点の低かったあなたへ)
 得点が低すぎるというのも問題があります。あまりきびしすぎるというのも、よくありません。
子どもの今の状態をみて判断します。萎縮、内閉など、性格的なゆがみがなければよしとしま
す。
 一般的には、極端に甘い親、反対に極端にきびしい親というのは、自分自身の中に親像の
ない人とみます。もしそうであればこの診断書の親像度の項目をもう一度、読んでみてくださ
い。



(7)服従ママ

(得点の高かったあなたへ)
 子どもに遠慮を感じたり、気がねをするようであれば、あなたの親子関係は、かなり危険な状
態にあると判断されます。あるいは危険な状態が長く続いたために、そうなったのかもしれま
せん。あなたはあなたなりに、懸命に親子関係を修復しようとしているのかもしれませんが、あ
なたの服従的な態度は、一方であなたの子どもをますますどら息子化しているはずです。もち
ろんあなたは「これではよくない」と思っているのですが、あなたは子どもに嫌われるのを怖が
っている……。ちがうでしょうか。
 一般的には、過保護タイプの親、溺愛タイプの親は、子どもに服従的になることが知られて
います。子どもに問題があるというよりは、親側の精神的な未熟さに起因することが多く、親と
子どもの間に一線が引けないためにそうなります。心を鬼にして、「私は私。子どもの人生は子
どものもの」と割り切る努力をします。
 (得点の低かったあなたへ)
 親の存在感が強すぎるというのも、子どもの成育にはあまり好ましいことではありません。子
どもは親を踏み台にして伸びていきます。また親が踏み台になることを恐れてはいけません。
こう書くと、親には威厳が必要であり、子どもに馬鹿にされるようではメンツが立たないと反論
する人もいますが、封建時代ならいざ知らず、こういうものの考え方は21世紀には通用するは
ずもないのです。親も子も、一人の人格者として互いに尊敬し合うのが、私はこれからの新し
い親子象だと思うのですが、違うでしょうか。



(8)同調ママ

(得点の高かったあなたへ)
 親には親のテンポがあり、子どもには子どものテンポがあります。子どもが親のテンポに合
わせることは不可能ですから、親のほうが子どものテンポに合わせなければなりません。子ど
もの心をつかむためには、そうします。
 このテンポが狂うと、家庭の中に不協和音が流れるようになります。最初は小さな不協和音
ですが、やがて亀裂になり、さらに親子断絶へと発展する危険性すらあります。親は子どもの
心がわからない。一方、子どもは子どもで、わかってもらえないという気持ちの中で、互いに
悶々とした関係を続けるようになります。よく「うちの子はぐずでねえ……」とこぼす人がいます
が、それは親の目から見た判断にすぎません。親のテンポが早いために子どもがぐずに見え
るだけで、実際にはぐずでないケースがほとんどです。子どもをぐずだと思ったら、親のテンポ
を少しだけ遅くしてみる。それで子どものぐずはなおるはずです。
 なおこの質問は、アメリカ人とくらべても、日本人のほうが、相対的に高得点になるものと思
われます。一般的には、日本人の親は子どもの心をつかむのがへただと言われています。
(得点の低かったあなたへ)
 あなたは子どもの心をしっかりとつかむことができます。将来、互いにわかりあえる親子にな
ります。親が子どもを尊敬し、子どもが親を尊敬する。そんな家庭をめざして、がんばってくださ
い。



(9)期待ママ

(得点の高かったあなたへ)
 親が子どもの将来に夢をもつことは、悪いことではありません。それがあるから、子育ても楽
しくなります。が、その夢が限度を超えたとき、それがここでいう過剰期待になります。その過
剰期待。過剰期待ほど、子どもを苦しめるものはないと、まず心得るべきです。そればかりで
はありません。親が子どもに期待をかければかけるほど、子育てのあり方そのものまで歪めま
す。
 子どもが親の期待に答えれば答えるほど、親の期待は際限なくふくらみますし、反対に期待
に反すれば反するほど、親は子どもに無理をし、子どもは子どもでますますその重圧感に悩む
ことになります。
 親の過剰期待は、親のエゴそのものであることを、まず理解します。そして子どもを伸ばす・
伸ばさないという視点ではなく、自分自身が子どもの前で伸びてみせるという視点で、ものを考
えるようにします。
 (得点の低かったあなたへ)
 あなたは子どもを一人の人間として認めています。そういう子どもとの対等意識は、やがてあ
なたの親子関係を良好なものにします。子育ての目標をどこに置くかによって、子育ての仕方
も変わってきますが、子どもを「よき家庭人に育てる」ということであれば、あなたの子どもはそ
のよき家庭人に成長します。



(10)気負いママ

(得点の高かったあなたへ)
 気負いの強い親は、子育てがどこかぎこちなくなります。もともと子育てというのは、頭で考え
てするものではないからです。
 で、その気負いの強い親は、その基本に、親像のない親とみます。たとえば不幸にして、不
幸な家庭で育ったとか、あるいは子どものときから、親を否定しながら大きくなったとか。ある
父親は、戦争で父親をなくし、母親の手だけで育てられました。だから父親というものがどうい
うものであるか、知りませんでした。「娘を抱いていても、これでいいのだろうか。あるいはどの
程度抱けばいいのか、抱いてはいけないのか、それがわからず苦労しました」と、その人は私
に話してくれました。
 もう少しわかりやすい話では、人工飼育されたチンパンジーは、子育てができないという話が
あります。中には、自分の子どもを見て、ギャーギャーと逃げ回るのもいるとか。人工飼育され
たチンパンジーは、自分自身が親に育てられた経験がない、つまり、親像を自分の中にもって
いないため、子育てができないと考えられます。
 もしあなたがここでいう気負い先行型の親であれば、まずあなた自身の過去にメスを入れて
みること。そしてあなた自身の中に巣くっている「わだかまり」が、何であるかを知ること。それ
がわかるだけでも、あなたの子育てはもっとスムーズになるはずです。
 子どもは心豊かで、やさしい環境でスクスク育ってはじめて、子育てというものがどういうもの
であるかを知ります。そして今度は自分が親になったとき、自然な形で、子育てができるように
なります。子育てというのはそういうものです。
 もうおわかりかと思いますが、もしあなたが将来、子どもに幸せな家庭を築いてほしいと願っ
ているなら(当然ですが……)、今、この時点で、幸せな家庭というものがどういうものである
か、また親というものがどういうものであるか、それをしっかりと子どもに見せておきます。見せ
るだけでは足りないかもしれません。そういう環境で子どもを包んであげます。そして子育てと
いうものがどういうものであるか、それをしっかりと子どもの体にしみこませておきます。
 子育ての目標は、「子どもを自立したよき家庭人」に育てること。この原点に立ち返るなら、
親はどうあるべきか、その答えは自ずと出てくるのではないでしょうか。



(11)カリカリママ

(得点の高かったあなたへ)
 昔から「カリカリママの、ションボリ息子」(失礼!)と言います。親がカリカリすればするほど、
子どもの性格が萎縮することを言ったものですが、カリカリよりは、おおらかなほうがよいに決
まっています。子どもに任すべきことは任す。そういう姿勢が子どもを伸ばします。
 カリカリする人は、それだけ人生の視野の狭い人だとみます。もし子どものことでカリカリした
ら、自分自身の人生の視野を広めるように努力します。いろいろな人と交際するだけでも、視
野は広くなります。クラブや趣味の会へ入るだけでも、視野は広くなります。カリカリする人ほ
ど、そういう会合を避ける傾向があり、それがますますその人を、独善的にしてしまいます。こ
れは極端な人のケースですが、子どもに与えるコンパス一つで、真剣に悩んでいた人がいまし
た。「このコンパスはいい。しかしこんなコンパスでは、勉強ができなくなる」と。あるいは子ども
に与えるテレビゲームの種類について、あれこれ雑誌をよみあさって選んでいる人もいまし
た。
 (得点の低かったあなたへ)
 より大きな仕事に取り組めば取り組むほど、それまでの仕事が小さく見えてきます。そして小
さなことが気にならなくなります。きっとあなたはそういうタイプの人かもしれません。私もこうい
う仕事をしながら、教育の裏が見えてくるようになって、教育観がずいぶんと変わりました。少
なくとも、教育のもつ幻想にまどわされなくなりました。そして一方、子どもにはもっと大切なも
のがあるはずだと考えるようになりました。あなたのおおらかな人生観は、あなたの子どもによ
い影響を与えているはずです。



                                        
(12)叱りママ

(得点の高かったあなたへ)
 暴力に慣れた子どもは、必ず暴力を繰り返すようになります。今はまだあなたの子どもは小
さく、あなたのほうが「力(?)」が上ですから、あなたの子どもはあなたに従うかもしれません
が、体力的には、小学校の四、五年から立場が逆転するようになります。あるいはあなたが老
人になったとき、逆にあなたがその体罰を受けるようになるかもしれません。暴力はあなたの
子育てを見苦しくするのみならず、あなたの思い出そのものを暗くてさみしいものにしてしまい
ます。
 もしあなたが日常的にはげしい体罰を繰り返しているようであれば、あなたは本当は子ども
を愛していないのかもしれません。あるいは何か大きなわだかまりがあるのかもしれません。
まずその事実を冷静にみつめなおしてみてください。愛していないのなら愛していないでも、構
いません。要はそれに気づき、前向きに子育てをしていくということです。わだかまりがあれ
ば、当然、それと闘います。
 今のあなたのお子さんの状態はどうでしょうか。萎縮していませんか。もしそうでないならよい
のですが、はげしい体罰を受けると、子どもの心は萎縮します。(あるいは粗放化することもあ
ります。)そしてそれは大きな心の傷となって子どもに残ります。どうか注意してください。あるい
は体罰を加えるとしても、頭ではなく、お尻にします。「体罰はお尻」と決めておくとよいでしょう。
頭はその子ども(人)の人格が宿るところです。たとえ親でも、それを叩く権利はありません。
(得点の低かったあなたへ)
 性格的にも、情緒的にも安定したあなたを想像できます。あなたの度量の深さが、今、あな
たの子どもを伸びやかにしているはずです。ただデレデレに甘いのは禁物。言うべきことは言
いながら、子どもを指導するという姿勢も大切にしてください。



                                        
(13)支配ママ

(得点の高かったあなたへ)
 子どもへの支配度が高い親ということになります。子どもを一人の人格者と認めていない心
配があります。あるいは子どもを「物」のように考えているのかもしれません。しかしその意識
が強ければ強いほど、あなたと子どもの間には、溝ができるようになり、その溝はやがて亀
裂、さらに断絶へと発展するかもしれません。
 支配度の強い親は、一見、子ども思いの親に見えるかもしれませんが、専門的には代償的
過保護といって、わかりやすく言えば、自分のために子どもを愛しているに過ぎないということ
になります。本物の愛ではないということです。子どもを愛するということは、子どもが自立して
いく、そのさみしさに耐えることです。あるいは子どもの人格を認め、子どもにその人生を任
す、その不安に耐えることです。子どもはあなたから生まれますが、あなたの所有物ではない
のです。
 なお日本には古来、「家督制度」というのがあって、子どもを「物」と考える風習が今でも残っ
ています。派手な結婚式や結納金という制度に、その残像を見ることができますが、言いかえ
るなら、こうした原始的な親子観が21世紀の日本で通用するはずもないのです。そんなことも
考えながら、子育てのわくぐみを考え直します。
 (得点の低かったあなたへ)
 無責任な放任的態度や、育児拒否は、子どもの心に大きな傷をつけることがわかっていま
す。もし極端に点が低いようであれば、これらを疑ってみます。が、平均点、あるいは、それよ
りやや低い程度であれば、むしろ望ましいことと考えます。あなたの子どもは、自立した子ども
に成長します。



(14)完璧ママ

(得点の高かったあなたへ)
 子育てにはファジィー(あいまい)な部分も必要です。あまりぎすぎすだと、子どもも疲れます
が、親も疲れます。最悪の場合、どちらかが神経症になることも考えられます。こういうことを
書くと、あなたのようなタイプの方は、「何てこと言うのだ!」と、怒るかもしれませんが、子育て
というのはそういうものです。親が完璧な子どもを求めれば求めるほど、皮肉なことに子どもは
小さくなってしまいます。英語の表現を借りるなら、ダル・ボーイ(つまらない少年)になってしま
います。
 子育ての目標は、子どもを自立させること。そのためには子どもを自由にします。自由という
のは、もともと「自らに由る」という意味です。自分で考えさせ、自分で行動させ、そして自分で
責任をとらせるということです。子ども自身に失敗をさせ、子ども自身に痛い思いをさせること
も、子育てには必要だということです。子どもから視線をそらし、時に子どものことを忘れて自
分のことをする。今のあなたにはそんな姿勢も必要ではないでしょうか。あなたも含めて、世の
中には完璧な人間などいないのです。それを子どもに求めたり期待してはいけません。
(得点の低かったあなたへ)
 低いということがよいということにもなりません。あまり低いようであれば、今度はあなたのい
いかげんさが疑われてしまいます。もっとも子どもはそのほうが伸び伸びするのですが……。
一度反省してみてください。



(15)育児拒否ママ

(得点の高かったあなたへ)
 親の拒否的な養育態度は、子どもの心に重大な影響を与えます。子どもが無感動、無関心
になることもありますが、精神そのものが歪むことも報告されています。さらにその子ども自身
が将来、子育てはもちろん、結婚すらできなくなる可能性すらあります。
 私が子どものころ、近所に、子どもを一度も抱いたことがないという母親がいました。エプロ
ンの上に、それが汚れるからといって、もう一枚エプロンをかけるような人で、私にはとても神
経質な人に見えました。
 こうした拒否的な態度をとる人には、何か大きな心のわだかまりがあるのがわかっていま
す。ある母親は長男を妊娠したため、今の夫と結婚したのですが、それが原因で「どうしても子
どもを愛せない」と悩んでいました。最近多いのが、出産と同時に仕事をやめ、家庭に入ったこ
とが原因で、ここでいう拒否的な態度になる人です。
 こうしたわだかまりが何であるか知るだけでも、問題の半分は解決することになりますから、
一度冷静に心の中を探ってみてください。
 (得点の低かったあなたへ)
 育児拒否と溺愛はちょうど正反対の位置にありますが、ともに、親側の情緒不安、精神的未
熟さが原因と考えます。点が低いからといって、喜んでばかりはいられません。もしかなり点が
低いようであれば、溺愛を疑ってみます。育児拒否する人は、子どもとのつながりがもてない
人。反対に溺愛に走る人は、子どもとの間に一線を引けない人ということになります。



(16)親意識の強いママ

(得点の高かったあなたへ)
 日本人は元来、上下意識の強い国民だと言われています。夫が「上」で、妻が「下」。先生が
「上」で、生徒が「下」。そして親が「上」で、子が「下」というわけです。親意識というのは、つまり
はこの上下意識のことを言います。そしてその上下意識は、保護と依存、命令と服従の関係で
成り立っています。
 この上下意識が強ければ強いほど、親は気負い先行型の子育てをします。「私は親だ」とい
う意識が先に立つわけですが、気負いが大きければ大きいほど、親も疲れますが、子どもも疲
れます。そしてその「疲れ」が、疲れだけの範囲でとどまっていればよいのですが、その疲れが
時として、親子の間に亀裂を入れることになりかねません。保護と依存、命令と服従の関係に
は、自ずと限界があるということです。
 ある父親は人一倍、子ども思いの父親ですが、子どもたちには評判がよくありません。子ど
もがいくつになっても、親風を吹かしているからです。子どもがなにかを反論したりすると、決ま
り文句はただ一つ。「親に向かってなんてことを言うのだ!」と。先日もその人が、ちょっと失敗
をして、三〇歳も過ぎた息子に迷惑をかけるような事件がありました。そこで私が、「謝るべき
だと思う……」と忠告すると、「私は親ですよ。親がそんなことできますか」と吐き捨てました。
 こんな母親もいました。息子の一人が結婚したことについて、「横浜の嫁に、息子を取られて
しまいました」と。子どもが結婚したことをその人は、「取られた」と言うのです。そしてこう続け
ました。「子どもなんて育てるもんじゃ、ありませんよね」と。なんともさみしい母親でした。
 確かに子どもは母親の胎内から生まれますが、生まれたと同時に、子どもといえども一人の
人間であって、親の所有物ではありません。つまるところ親意識というのは、子どもを所有物か
なにかのように思うところから始まります。だから子どもは親にこう反論します。
親「誰のおかげで、ここまで大きくなれた!」
子「別に生んでくれと、頼んだわけではない!」
親「私は親だ。親の言うことを聞け!」
子「親が何だ!」
 親意識度の高かった人ほど、注意します。



(17)親像の強いママ

(得点の高かったあなたへ)
 「親像」があまり心に刻まれていない人とみます。つまりそれだけに子育てが我流になりやす
く、失敗もしやすいので注意します。たとえば子どもにきびしすぎる親とか、反対に甘すぎるとい
う親は、不幸にして不幸な家庭に育った人とみます。子育てというのは、自分が受けた子育て
を再現しているにすぎません。中に、「いや、私は親とは違う」と言う人もいますが、そういう人
はそういう人で、過去の暗い思い出を引きずっているにすぎません。親を否定するということ自
体、すでに親像のない人とみます。
 親像をもっていないならいないで、大切なことは、そういう不幸な過去をあなたの世代で断ち
切り、それをあなたの子どもの世代に伝えないことです。この種の不幸は、あなたからあなた
の子どもへと、伝播していきますから注意します。
 (得点の低かったあなたへ)
 あなたは自然な形で、子育てができているはずです。子どもを抱くときも、また子どもを叱ると
きも、あなたは気負ったりせず、楽にできます。そういう自然さが、あなたの子育てを明るく楽し
くします。今の状態を続けてください。



(18)学歴信仰ママ

(得点の高かったあなたへ)
 日本人の心の奥底には、明治政府以来の国策としてつくられた、この学歴信仰(学校神話)
が、今でも根強く生き残っています。学校とは行かねばならないところ、学歴は人間の生活に
は必要不可欠なものという考え方です。人を見る判断基準として、学歴が使われることもあり
ます。こうした風潮の中で、学歴のある人は、その人の実力以上に得をし、そうでない人は損
をします。こういう後進国的な発想は、21世紀まで残してはなりません。あなた自身のためと
いうよりは、子どもの未来のために、です。
 で、あなた自身の問題ですが、学歴信仰に陥れば陥るほど、あなたは自分の姿を見失いま
す。今、親子とは名ばかり。廊下ですれちがっても、目をそむけあう親子はいくらでもいます。し
かしそういう親でも、外の人に向かっては、「おかげでいい大学へ入りまして……」と喜んで見
せます。そういう親子になる心配があります。
 なお学歴の恩恵をたっぷり受けている人ほど、自分の子どもにもそれを求めるようになりま
すから、注意します。
 (得点の低かったあなたへ)
 この日本ではあなたのような人は、まさに少数派です。いろいろと疎外感や孤独感を覚える
こともあるかもしれませんが、どうかこれからもたくましくがんばってください。あなたは本物が
何であるかがわかる人ですし、あなたの子どももまたそういう人物になります。もし子どもが進
学や就職で悩んだら、「今できることを、一生懸命しなさい。学歴や地位、名誉などというもの
はあとからついてくるものです」と、子どもには言えばよいでしょう。



(19)世間体を気にするママ

(得点の高かったあなたへ)
 見栄、メンツ、世間体。この三つから解放されたら、子育てにまつわるほとんどの悩みは解
決するといっても過言ではありません。反対にこの三つに毒されると、親は自分の姿を見失
い、続いて、子どもの姿を見失います。もっと言えば、子育てそのものを見苦しくします。こんな
ことがありました。
 ある母親は、自分の子どもが、下位にランクされている中学へ進学が決まったときから、一
切、学校での会合には顔を出さなくなりました。進学校別の懇談会にすら行きませんでした。そ
してやがてその子どもが中学生になったときのことです。その母親は近所の人に恥ずかしいか
らという理由で、近くのバス停まで毎日車で子どもを送り迎えしたといいます。世間体にこだわ
る人は、そこまでします。
 世間体が気になったら、その世間体に悩むのではなく、あなた自身の人生観を広くすること
に努力します。あなたの地域や社会にこだわるのではなく、世界的な視野や、宇宙的な視野で
ものを考えるようにします。世間体を気にすればするほど、あなたという人間は小さくなり、あな
たの子どもがそれに従えば、あなたの子どももまた小さな人間になってしまいます。
 (得点の低かったあなたへ)
 あなたのサバサバした生き方は、いろいろな面で、あなたの子育てによい影響を与えている
はずです。あなたは「私は私。人は人」とい人生観の持ち主かもしれません。あるいはあなた
は自分に自信をもっている。あなたの子どもはそういうあなたの姿を見て、ますます伸びやか
になっていきます。



(20)仮面ママ

(得点の高かったあなたへ)
 自閉症になった子どもを、10年近く家の中に閉じ込め、近所の人に隠しつづけた親がいまし
た。あるいは息子がD高校へ入学したことを恥(?)と思い、以来体調を崩してしまった親もい
ます。仮面をかぶるようになると、親はそういう行動をとるようになります。そして自分の姿を見
失ってしまいます。
 この日本では「個人」の確立がまだ未成熟で、そのためどうしても他人の目を意識した子育
てをする人がいます。地方都市や、農村など、古いしきたりの残っているところほどそうで、見
栄やメンツあるいは世間体、つまりここでいう仮面にこだわる人は少なくありません。
 しかしこういう仮面は、子育ての思い出を見苦しくします。いつか子ども自身が自分の過去を
振り返ったとき、そこに醜い親の姿を見るかもしれません。「どんなときでも親は世間体の盾と
なって、私を守ってくれた」という思いが、子育ての思い出を美しくします。そういう子育てを目
指します。
 (得点の低かったあなたへ)
 あなたはすがすがしい人生観の持ち主であると同時に、子どももあなたの人生観に守られ、
すくすくと育っているはずです。大半の人が、世間の流れの中に身を沈め、静かにしているの
に、あなたはそれをよしとしていない……。これからもがんばってください。



(21)社交ママ

(得点の高かったあなたへ)
 視野が狭いと、ものの考え方が、どうしても独善的になります。こればかりはいくら知識があ
っても、防ぐことができません。理由は簡単です。子どもは確かに親から生まれますが、子ども
といえども一人の人間。決して親の複製物ではないのです。だからあなたという人間と違って
当然。またそうあるべきなのです。が、もともと人間関係の希薄な人にはそれがわかりません。
いろいろな人間がいること自体、理解できないのです。だから独善的になってしまう。だから失
敗しやすいというわけです。
 一方、社交範囲の広い人がいます。そういう人は、人に対する許容力があるため、子どもに
対しても同じように考えます。そしていろいろな人を受け入れるようにして、子ども
を受け入れます。そのため親子関係もスムーズになります。
 ただし仮面社交というのもありますから注意してください。社交的でない人が、何らかの目的
と意図をもって社交的であるふりをすることです。このタイプの人は、表向きの社交性とは別
に、自分の独善性を守ろうとしますから、注意します。
(得点の低かったあなたへ)
 あなたの社交性はお子さんによい影響を与えているはずです。あなたのお子さんはあなたと
いう親を通して、より広い世界を見ています。今の状態に自信をもってください。



(22)誤解しやすいママ

(得点の高かったあなたへ)
 この質問で、〔20点〕のところに書いたことは、私は「誤解だ」と思いますが、あくまでもそれは
私の考えです。そして〔10点〕のところに書いたことが、私は「正解だ」と思いますが、これもまた
あくまでも私の考えです。参考意見としてとらえてくだされば結構です。
 もう10年近くも前のことですが、オーストラリア人の友人と、「よい学校とはどんな学校なの
か」というテーマで議論したことがあります。日本では進学率の高い学校がよい学校ということ
になっていますが、その友人はこう言いました。「オーストラリアには、グラマースクールといっ
て、全寮制の学校がある。そこでは子どもの希望と特性に合わせて、先生がカリキュラムを組
んでくれる。たとえば木工が好きな子どもは、毎日木工ができるように、と。また選択科目の多
い学校がよい学校だ。外国語でも、よい学校ほど、インドネシア語、日本語、フランス語、ラテ
ン語から、自分の好きな科目が選べるようになっている」と。
 日本ではどこの私立中・高校でも、その学校案内には、進学先実績と、合格者数が表示され
る習慣になっています。こうした風潮の善悪はともかくとして、世界的に見れば、いかに異常な
現象であるかは、外国から見るとよくわかります。
 (得点の低かったあなたへ)
 日本では、あなたのような人はまさに少数派です。日本人には日本人の子ども観、子育て
観、教育観があります。私も子どものころ、「学校で勉強するのですよ」「先生の言うことをよく
聞くのですよ」「よい成績をとって、よい大学へ入るのですよ」と、それこそ耳が痛くなるほど、聞
かされたものです。今でもその傾向がありますが、そういう日本全体の流れに背を向けて生き
るのは、たいへんなことですね。



(23)迷信ママ

(得点の高かったあなたへ)
 宗教と迷信は分けます。また宗教とカルト(狂信)とは区別します。ここでは人それぞれがもつ
宗教観まで、問題にしているわけではありません。
 ここで問題とするのは、迷信です。日本では血液型による性格判断なるものが横行していま
すが、それもその一つです。根拠がないばかりか、合理性もありません。ほかに占いとか、手
相、姓名判断など。こういうあやしげなものにどっぷりとつかっていると、ものの考え方がおかし
くなって当たり前です。幼児ほど、その影響を大きく受けるので注意します。私も子どものころ、
幽霊の話をさんざん聞かされたので、この年齢になっても霊魂の話など、頭の中では否定でき
ても、実際にその種の事件が身近で起きたりすると、気味悪く思うことがあります。
 幼児期というのは、合理的なものの考え方の基本をつくる大切な時期です。脳のスイッチ(思
考回路)ができる時期と考えるとわかりやすいでしょう。幼児期には、こういう迷信は避けます。
この時期に一度ゆがんだ思考回路ができると、それを修正することは、たいへん難しくなりま
す。
 (得点の低かったあなたへ)
 あなたの合理的なものの考え方の影響を受けて、あなたの子どももまた、合理的なものの考
え方をしているはずです。いつか子どもは子どもで、自分の宗教観をもつかもしれませんが、
それはそれとして、温かく見守ってあげてください。



(24)秩序崩壊ママ

(得点の高かったあなたへ)
 家庭が崩壊すると、子どもの心は粗放化します。ひどくなると、ツッパルようになり、さらに非
行に走るようになります。子どもの心は、絶対的な安心感のある家庭ではぐくまれます。ここで
「絶対的」というのは、「疑うことのない」という意味です。この安心感がぐらつくと、子どもの心も
ぐらつくということです。
 それぞれの家庭にはそれぞれの事情がありますから、これ以上のことは私には言えません
が、その家庭をつくるのは、親の義務かもしれません。しかしこんなことも言えます。いくら家庭
が崩壊していても、親子の間に細くてもいいから、一本の糸があれば子どもの心はゆがまない
ということです。多くの非行に走った子どもたちを見てきましたが、彼らにはその糸がないこと
がわかりました。先生に見捨てられ、ついで親にも見捨てられたとき、子どもの心は行き場を
なくし、ここでいう非行に走るということです。最後の最後まで、一本の糸だけは大切にしてくだ
さい。
 (得点の低かったあなたへ)
 問題のない家庭とみます。今の状態を守ってください。さらにこんなことにも注意すると、あな
たの家庭はますます居心地のよい家庭になります。
 あなた自身が子育てを離れて、別の世界に生きがいを求めること。子どもはあなたの生き生
きとした姿を見て、自分の活力を養います。またそれにまさる家庭教育はありません。家庭の
中にピリッとした緊張感が生まれてくればしめたものです。



(25)柔軟ママ

(得点の高かったあなたへ)
 いわゆる変化のないマンネリ化した生活は、子どもの知恵の発達にとっては、大敵です。子
どもは日々の生活を通して、思考の柔軟性を養い、そして知恵や知的能力を伸ばしていきま
す。家庭では、子どもの目から見て、「あれっ!」と思う意外性を大切にします。たとえばカレー
ライスを箸で食べてみるとか。先日も我が家にホームステイしたオーストラリア人は、白いごは
んにミルクと砂糖をかけて食べていましたが、私たちは心底それに驚きました。ここでいう意外
性とはそういう意外性のことをいいます。決して、お金をかけろというのではありません。公園
でいろいろな葉っぱをかんで、味を調べさせるだけでも、子どもにはすばらしい刺激になりま
す。
 頭のやわらかい子どもは、結果的に伸びます。おとなの冗談もよく通じますし、そのときどき
の変化に順応して、臨機応変に対処していきます。反対に頭のかたい子どもは、一見、早熟的
にしっかりとしますが、そののち伸び悩みます。つまり頭のやわらかい子どもにするかどうか
は、親の役目だということです。
 (得点の低かったあなたへ)
 あなたの子どもは恵まれた環境の中で、今、生き生きとしているはずです。あなたと一緒に
伸びることの楽しさを味わっています。人はおとなになるにつれて、子どもらしさをなくし、子ども
のときの純粋な喜びや悲しみを忘れてしまいます。言いかえるなら、それだけ人生は殺風景に
なるということです。ワーズワースは、「子どもは人の父」と歌い、「死ぬときも、虹を見て、子ど
ものときに感動したように感動したい」というようなことを書いています。



(26)設計ママ

(得点の高かったあなたへ)
 設計度が高いということになります。親が設計図を描けば描くほど、親も疲れますが、子ども
も疲れます。そしてその重圧感が子育てを歪め、子ども自身を歪めます。結論から先に言え
ば、親の描く設計図は子どもの将来をせばめます。いくら考えたところで、それは「親の目から
見た小さな世界」での設計図に過ぎないからです。ものの考え方は無限にあり、そして子ども
の将来像も無限にあります。たとえば私たち団塊の世代は、誰も迷わず、大企業のサラリーマ
ンになることを考えましたが、今ではそういう考え方は通用しません。時代とともに、ものの考え
方も大きく変わります。
 設計度が高ければ高いほど、それが過干渉や過関心につながり、子どもは萎縮します。た
いていは自信喪失になり、自分の将来に対して悲観的になる傾向を示します。子どもらしいは
つらつとした表情が消えることもあります。
 (得点の低かったあなたへ)
 放任度が高いということになります。あるいはあなたは子ども信頼型の親ということになるの
かもしれません。あなたのお子さんが伸びやかなのは、そのためです。
 子どもを伸ばす最大の秘訣は、「子どもを信ずること」。子どもは(おとなも!)、自分を信じて
くれる人の前では、よい面を見せようとします。そういう子どもの特性を逆に利用して子どもを
伸ばすわけですが、もしあなたの子どもが、なにか新しいことができるようになるたびに、「見
て! 見て!」と、あなたのところにやってくればそれでよし。あなたの子どもはますます伸びや
かな子どもになります。
 放任ということは、子どもを自由にすること。「自由」というのは、もともと「自らに由る」という
意味です。@まず子どもに考えさせる。A次に自分で行動させ、B最後に自分で責任をとらせ
る、です。子育ての目標は、つまるところ、自立したよき家庭人に子どもを育てることです。こう
いう原点に立ち返るなら、子育てがどうあるべきか、その答はおのずと出てくるはずです。



(27)わだかまりママ

(得点の高かったあなたへ)
 子育てをいちいち考えながらする人はいません。子育てはいわば、条件反射のかたまりのよ
うなもの。だから多くの親たちは異口同音にこう言います。「頭の中ではわかっているのです
が、いざそのときになると、ついカッとして……」と。心の中に大きなわだかまりがあると、その
わだかまりが、人間を裏で操るようになります。
 ある母親は、長男を妊娠したため、それまでの仕事をやめなければなりませんでした。そうい
う思いが、わだかまりとして心に残り、長男が何か失敗をするたびに、「あんたさえいなけれ
ば!」と怒鳴っていました。「ふだんは何ともないのですが、そういうときになると本音が出てし
まう」と。
 わだかまりと戦うためには、まずそのわだかまりが何であるかを知ります。わだかまりという
のは、たいていは心の奥底に潜んでいて、なかなか顔を見せないものですが、それが何である
かわかるだけでも、問題の半分は解決したとみます。いつも同じパターンで子どもとのトラブル
が始まるということであれば、このわだかまりをまず疑ってみます。
 (得点の低かったあなたへ)
 あなたはいつもサバサバとした気持ちで、お子さんと接することができるはずです。子どもは
子どもで、あなたのことをサッパリとした親だと思っているはずです。子どもの人生観も明るくな
り、あなたは良好な親子関係を築くことができます。



(28)不安ママ

(得点の高かったあなたへ)
 親の思いは必ず、子どもに伝わります。親が子どもの将来を不安だと思っていると、子どもも
また、その将来を不安に思うようになります。たとえば親が「うちの子は何をしても心配だ」と思
っていると、子どもはますます失敗を繰り返すようになります。私にもこんな経験があります。
 幼稚園で教師になったころのことですが、初対面で「この子はいやな子だ」と思った子ども
は、必ず心が離れていくということに気づきました。一,二か月ならなんとかなりま
すが、一、二年となると、自分をごまかすのは容易なことではありません。イギリスの諺にも、
「相手は自分の思うように、あなたを思うようになる」というのがあります。相手の心は、自分の
心を写す鏡のようなものだという意味ですが、子どもの心とて例外ではありません。あるいはも
っと正直です。あなたが自分の子どもを「いい子だ」と思っていれば、子どももあなたを、いい親
だと思うようになります。
 親が「いやな子だ」と思っていると、子どもは、やがて表情も暗くなり、ものの考え方が卑屈に
なります。さらに症状が進むと、おとな拒否症など、成長することそのものを拒絶するようにな
るかもしれません。そうなればそれこそ育児の大失敗というものです。
 自分自身の中にある不安感と戦うためには、自分の心をつくりかえるしかありません。方法
の一つとして、子どもに向かっては、「あなたはいい子」を繰り返すという方法があります。最初
はとまどいがあっても、やがてそれが親の心となり、ついで子どもの心となります。子どもは(お
となも)、自分を信じてくれる人の前では、よい面を見せようとします。そういう子どもの特性を
利用して子どもを伸ばします。
(得点の低かったあなたへ)
 おおらかで楽天的なあなたの子育て観は、いろいろな意味で、あなたとあなたの子どもの人
生観を明るくしているはずです。多分あなたの子どもは何か新しいことができるようになるたび
に、「見て! 見て!」と、あなたのところに走ってくるかもしれません。そういう家族の雰囲気
が、あなたの子どもをますます伸びやかにしているはずです。



(29)嫌悪ママ

(得点の高かったあなたへ)
 親だから子どもを愛しているはずだと考えるのは、正しくありません。今、人知れず子どもを
愛することができず悩んでいる母親は、多いです。程度の差もありますが、10人に一人ぐらい
の割合でいるでしょうか。
 もっともそれに気づいている親はまだよいほうで、中には、それに気づかないまま子育てをし
ている人がいます。子どもを虐待する親というのは、たいていこのタイプの親とみてまちがいな
いようです。
 そこで大切なことは、子どもを愛せないなら愛せないで、それを悪いことだと決めてかからな
いことです。「私は私」と居直ることです。そういう割り切りのよさが、心に風穴をあけ、子育てを
わかりやすいものにします。そしてあなたはあなたで、自分のしたいことをします。子どもには
冷たい母親ということになるかもしれませんが、そのほうが子どももたくましく自立していきま
す。子どもは平均して小学三,四年生を境にして親離れをしていきますので、そのころまでは
親としての義務を果たします。
 (得点の低かったあなたへ)
 子どもを愛するということは、子どもとの別れのさみしさに耐えることです。いつかあなたの子
どもは自立して、あなたのもとを去っていきます。あなたにはその準備ができていますか。そう
であるならよし。そうでないなら、愛情の内容を少し考え直してみます。深く子どもを愛するとい
うことと、溺愛は別です。溺愛ママにならないように注意します。



                                        
(30)神経質ママ

(得点の高かったあなたへ)
 家庭のあるべき第一の条件は、「心が休まる場所」ということです。アメリカのことわざにも、
「ビロードのクッションよりも、カボチャの上」というのがあります。これはビロードのクッションの
上にすわるよりも、カボチャの上にすわるほうが、心が休まるという意味です。
 子どもが保育園や幼稚園へ通うようになると、そこにもう一つの世界ができるようになりま
す。そしてその世界は年齢とともにふくらみ、同時に家庭がむしろ補助的な世界になります。つ
まり家庭が、保育園や幼稚園で疲れた子どもの心をいやす場所ということになるのですが、お
母さんにとっては、家庭はいわば職場。この意識のズレが、子育てにまつわるさまざまなトラブ
ルの原因となります。その一つが、「あと片づけ」。ほとんどの親は、子どものあと片づけで悩ん
でいますが、うつ型児童特有の病的な散らかしは別として、あまりうるさく言わないのがコツで
す。親が神経質になればなるほど、子どもは自分の居場所をなくしてしまいます。つまり家庭で
は自分の心をいやせなくなります。
 親が神経質になればなるほど、子どもから子どもらしさが消え、子どもは萎縮します。神経質
な子育ては百害あって一利なし。一見子どもは従順ですなおな子どもになりますが、問題を先
送りする形で、あとあといろいろな問題を引き起こすようになります。子育てには、「いいかげん
さ」も、時と場合には、必要なのです。
(得点の低かったあなたへ)
 あなたはのんびりママ。あなたのおおらかな子育てが、あなたの子どもを伸びやかにしていま
す。あなたの子どもはこれから先、いろいろ失敗はするかもしれませんが、たくましい子どもに
なっていきます。


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